2012年02月18日 21:23
画像はばんえい競馬帯広第2回目の開幕で配られたお茶でございます。昨年12/2の開場前に並んでまでして、頂いたものでございます。阿呆でございますね。
今回のも長いです。でも、だからこそ、読んでいただいだきたい。
日経ビジネスって書店で買えないんです、基本的に。ですから手に入れるには、定期購読するしかない。ところがですね、東京駅に行くと駅内書店(栄松堂書店等)で売ってるんですよ。大阪でも、そうらしい。帯広では無理なのかなぁ。
昨年末締め切りの勝毎郷土作家アンソロジーに応募いたしましてね。題名は『端野萬造奔(はし)る』でございます。ばんえい競馬に振り回された萬造を描いております。今回の廃止回避の影に萬造がいた、との荒唐無稽バナシ。
先月はホント、ばんえいで始まって、ばんえいで終えました。
日経ビジネス 2007年1月8日号
敗軍の将、兵を語る 経営不在のばんえい競馬
大野 清二 氏 (ばんえい競馬馬主協会会長)
(前略)
経営する意思すらない
組合は、旭川市長が正管理者を、岩見沢・帯広・北見の各市長が副管理者を務め、4市合同で経営を行いました。会社で言えば正管理者は社長ですよね。その下に3人の副社長がいるわけです。組合ができたのは1989年、平成元年でした。
それ以前は各市で市営競馬を運営していたのです。そうすると、それぞれが売り上げで負けたくないのでみんな一生懸命営業をして利益を上げていました。それが4市が合併して運営することになったのですから、競うことがなくなったのです。
(中略)
しかし、一言で言って組合には経営者がいませんでした。組合の実質上のトップは正副管理者の下にいる助役です。助役は旭川市役所を退職したOBが引き受けてきました。2年から4年で交代する形で天下りしてきた常勤の助役が正管理者の代わりに組合を切り回してきたわけです。
本来なら現場の責任者である助役はばんえい競馬を良くするために4市の市長と対決しなければならない。でもそんなこと言えませんよね。言ったら「おまえ、何をやってるんだ」と言われるだけでしょうから。だから赤字を背負っていたって何の手当てもしませんでした。それを私たち馬主組合などがいくらうるさく言っても組合は聞く耳を持っていない。
普通の経営者ならば、売り上げを上げるためにどうすればいいかを考えますよね。営利が目的でしょう。それどころか売り上げは一時期の半分まで下がっているのです。ならば経費の節減などリストラを考えるでしょう。出張費や宿泊費など見直せる部分はいくらでもあったのです。それでも何の手も打たれませんでした。役人の考え方。親方日の丸ですから、カネの痛みを知らない。なんぼ赤字を背負っていても組合には銀行が貸してくれる。カネを借りなければならない心配がないから、経営意識は働かない。
こんなことを言ったら失礼だけど、経営能力はゼロです。理由をつけてカネを使うのは上手だけど儲けることを知らない。「儲けられなかったこういう問題が起きる」と分っていても役所を退職したOBに何ができますか。私たち民間から見れば直すところがいっぱいあるのに聞こうともしない。経営する能力以前に、経営しようという意思がないのですよ。そういう時代を続かせてしまったことに忸怩たる思いがありますね。
資料の提示に数カ月
2005年12月、正管理者だった菅原功一旭川前市長から騎手・調教師の協会と馬主協会とに声がかかりました。もう4市での開催は限界だと。もし2007年度も開催するのなら4市に依存しないような予算を組んでほしい。そのために知恵を貸してほしい、と。私たちは3月から改革検討のプロジェクトチームを組織しました。そしてばんえい競馬が開催できるシュミレーションを4市に提出するために話し合いを重ねたのです。
ばんえい競馬の運営に民間の意見が取り入れられるのは初めてのことでした。早速改革案を検討するために私たちは組合の持つ詳細な資料の提示を求めたのです。これまでは経営に関する細かい数字は見せてもらえませんでした。馬主になんで見せなきゃならないんだ、という態度でしたから。だからよほどつつかなければ資料を出してこない。話し合うための資料を得るために余分な時間がいっぱいかかっているんですよ。3月から始まっているのにお盆くらいまでは資料を出す、出さないのやり取りだけで無駄な時間を過ごしてしまいました。
(中略)
その代わり、私たちも努力しますからという収支計画を検討して提出したのです。2006年の10月7日でした。計画案を経営にある程度反映させてもらえれば、それほど時間をかけずに改革できると考えていました。
しかし、10月20日に正副管理者が会合した時には旭川市と北見市は「継続は難しい」と発表しました。帯広市と岩見沢市は、2市開催を目指して検討すると改革案を持ち帰ったのですが、11月27日には岩見沢市が撤退するということになりました。それを聞いた帯広市長も、「1市では無理だ」と。それでも「民間の支援があれば何とかやりたい」というような話があったので、私たちは何とか存続してもらうために、緊急理事会を開くなどして希望をつなぎました。
市民への説明も悪い方へ
それにしても私たちが計画を提出してから、やめることを決めるまでがちょっと早過ぎると思いました。1ヵ月ですから。1ヵ月で存続か廃止かを十分煮詰めるような話し合いができているのでしょうか。市民の声と議会の声を聞いて決断すると説明を受けて私たちもその傍聴に行きました。
しかし、説明が悪い方、悪い方になされるんですね。「夕張市の二の舞にはなりたくない」「我々は子供にそういう思いはさせたくない」と。絶対赤字だということを決めつけるものだから、結局、市民の声も「それだったら早いうちにやめた方がいい」ということになってしまいました。
今から考えれば、改革検討プロジェクトチームのメンバーに民間を参加させたのは「格好作り」みたいなものだったのでしょう。要するに、調教師も騎手も馬主も再建計画の策定に加えてやったんだよ、十分検討したんだよというポーズが欲しかった。形だけ作って、計画にはまともに目を通さないで、「やめだ」と。
まあ、最初からそうするつもりだったんでしょう。要するにもうやめたいと。再建することを投げちゃったんですよ。「僕たちはもうできないから、あなた方で考えてください」と、さじを投げちゃったのです、早い話が。改革案を詰めて詰めて詰めて、それで2市なり4市に迷惑がかからない計画を作っても、ろくに検討もしないで・・・。ものの1ヵ月ぐらいで、「いや、これじゃダメだからやめる」と。そんな経営がありますか?
私たち民間人から言わせたら行政の感覚はむちゃくちゃですよね。私たちは商売をしてますから、赤字に税金を使うことに対して危機感を持っていたのですが、そうした危機意識が全然ない。そのずれが今日の結果を招いてしまったのです。行政側は行政側の言い分があるでしょうけど、我々としたらそういう思いしかないですよね。
(中略)
何でもやめてしまえばそれで終わりです。でも、続けていけばやっぱり未来があるし夢がある。ばんえい競馬は経営さえしっかりすれば北海道の地場産業に育つ可能性があると見ているわけですよ。そのためには努力したものがちゃんと報われる環境を作ってもらわないとダメですね。辛抱はするけどいつまでも砂漠の中を歩き続けることはできません。それでも、もう少し先にはってでも進んでいけば水が飲めるというのであれば、あり方も変わってくるはずです。
ばんえい競馬の歴史をさかのぼれば100年ぐらいの積み重ねがある。これは地域の財産ですよね。それをなくすのはもったいない。北海道というのは食べ物がおいしいとか、空気がきれいだとか、景色がいいとか、観光地的な要素が豊富にあります。そこに「世界に1つしかないばんえい競馬」をうまくアピールできれば、世界が広がると思うのですね。そういう意味では、ばんえい競馬はまだまだ一大産業になる可能性を秘めているんですよ。
民間と行政に感覚の違い
公正さの維持が市の役割
道塚重孝氏(旭川市農政部次長)
ばんえい競馬の運営に批判があったのは承知していますが、存続の努力がなかったわけではありません。輓馬をイベントなどに参加させるなどばんえい競馬を普及させる努力はしてきました。しかし、広告費や場外馬券場の拡大など、どの部分に投資するかという点で民間との間に感覚の違いはありました。ばんえい競馬を運営する市には公正な競馬を維持するという役割があります。
観光客の誘致や馬券売り場を拡大するには投資が必要です。しかし、この投資に見合うだけのリターンはあるのか。そうした点で慎重な決断を下していました。「売り上げが150億円あれば北海道では大企業だ」という指摘もありますが、実際154億円の発売収入のうち75%は当たり馬券の払い戻しに充当します。そうすると収入は38億円ほどになります。
報償費や人件費など諸経費を積み重ねていくと必要経費は43億円に上ります。つまり5億円はどうしても赤字になってしまう。加えて馬券の売り上げが年々落ちています。入場者数も確かに減っていますが、最近では家族連れでばんえい競馬を見に来るような方もいらしゃいます。問題は1人当たりの購買単価が下がっていること。つまり競馬場に来ても馬券を買わない、馬を見学に来る入場者が増えているのです。ばんえい競馬の1日の売り上げ金は1991年には2億3000万円ありましたが、今年は8500万円まで落ち込んでしまいました。
実際、競馬、競輪、競艇などの公営競技の市場規模は91年をピークに急激に縮小しています。唯一伸びているのは宝くじだけです。それ以外は長期低落傾向に歯止めをかけることができません。ばんえい競馬でも収入増を期待して広域の場外馬券販売や電話投票による発売に取組みましたが、手数料の負担が重くなり収益改善効果は得られませんでした。むしろ、結果的には単年度赤字が拡大したのです。
もともと競馬など公営競技の収益は畜産の振興や教育文化の発展、社会福祉の充実などに使用されることを目的としています。しかし、近年では公営競技の関係者を養うために競技の運営を続けざるを得ない状況になっている。そして生み出される赤字は税金に跳ね返ってくるのです。感傷的な議論だけで本当に良いのか。そういう意味では公営競技の存続に疑問を持つことにも十分な理由があると考えます。